私の入院中、叔母から(小林正子おばちゃん)絵手紙が届きました。
季節の草花や、野菜、くだものなど、まさに手書きのおはがきでした。
それは、ほんのりと墨の香りがして、すてきな言葉が添えられていました。
週に一度は必ず、多い時には、2,3枚まごころあふれる絵手紙を頂いていました。
母も素敵だねーと感激をかくせません。
次第に元気がわいてきたのです。ある日お見舞いに来てくださった時
あんたー、ゲームばっかりしてたってしようがないじゃないのよー。
たまにはこういうの書いてみたらと絵手紙のセットをプレゼントしてくださったのです。
えーーと、最初はとまどいましたが、その日に基本を習いました。
筆の持ち方、線を引くことから練習です。
あんたーなかなかすじがあるじゃないーなんておだてられたので、その気になってしまいました。
それからいろんなものを、書くようになったのです。
正子おばちゃんの絵手紙は、私を励ます言葉が添えてあり、はやく裕子ちゃんよくなってねと
おばちゃんの気持ちが痛いほど伝わってきます。
私も体調のいい時に、プロの先輩や、お世話になっている方々に、
感謝の気持ちをこめて書いていました。
カレーライスやお魚、みかんなど・・・やはり食べ物が多かったと思います。
当時私はまだ、水も飲めなかった状況でしたので、食べ物に思い入れが強かったのでした。
ある日、はがきがなかったので、便箋の裏に言葉だけを書いていました。
いっきに20枚ぐらい書いたでしょうか、自らを励ましたり、感謝の気持ちや、あせらずいこうよ。
など今の気持ちに素直に表現した文でした。
その時巡回で看護婦の岡野さんが中溝さんこれいただけませんかといわれたので、
お渡ししたのです。
次の日、婦長さんから病棟の壁に貼ってもいいかしら?というお話があり恥ずかしいですし、
こんなのでいいのかなーと思いましたが、皆さんにも元気をだしていただければ
いいなと思いお渡ししました。
そののち、看護婦さんから、○○さんが感動してたよ。
とか○○さん、じーっと読みながら泣いていたよ。と聞かされ、
私は全身に大きな喜びの風がザーと吹いたのを感じました。
この時、病気してこれでよかったんだと、病気に感謝をしようと心から思ったのです。
そんな中、いろんな方から、この筆文字をまとめて本にしたらというお話が持ち上がりまして、
恐縮ながら出版させていただく事になったのです。
入院中から今まで約500枚書きました。最近は、絵手紙より筆文字を多く書いています。
表紙は大好きなフクロウを選びました。福という言葉が入っているからかわかりませんけど、
私のトレードマークにしていきたいと考えています。たいしたことはいえませんが、
病気で苦しんでいる方や、落ち込んでいたり、悩んでいらっしゃる方、たくさんおられると思います。
この本のなかの一つでも皆様の胸の中に残る言葉があれば幸いです。
私もこれからもっと体調が良くなると信じています。
そしてもっと自分の感性を磨き、もっといいものを書いていきたいと思っています。
自分ごときで誠に恐縮ですが、皆様の元気をひきだし、
幸せへの歩みにつながるように、お手伝いできればと考えています。
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